運命の翼/ジューダス・プリースト 1976年
「メタル・ゴッド」としてヘヴィメタルの基礎を打ちたて、その後も一定のスタイルにこだわることなく進化し続けたプリーストの2作目にして、ブリティッシュハードロックの超名盤。
デビュー・アルバム「ロッカ・ローラ」はあまり評価が芳しくなく、方向性を確立したこのアルバムこそ実質のデビュー作ととらえる向きがあるようだ。これ以降は基本的に駄作はなく、常に高水準の作品を発表し続けている。さすがはメタルゴッドというべきか。
アルバム全体のトーンは重苦しく、暗く、そしてどこか薫り高い高貴な響きを持っている。
「英国的な」という表現は非常に安易な表現なのであまり使いたくはないのだが、「英国的」という表現がやはりどうしても似合う。
ブラック・サバスのようにドゥームな(重苦しく・ドローンとした)感じをベースにしながらも、より装飾的で繊細に表現された音楽である。邪悪な、皮肉っぽい旋律はサバスのものよりもう少し細やかな感じがする。ヘヴィさと、繊細な旋律。ブルースとはまた違う趣きのギターの泣き。鋭利な刃物のような鋭さを感じさせる。
あえて大雑把な例えをすると、サバスのサウンドが鈍重で邪悪な怪物なら、プリーストのサウンドは狡猾で高貴な悪魔のような感じなのである。
本作には後のプリーストのライヴで定番となった名曲がわんさか入っている。
「ヴィクティム・オブ・チェンジズ(邦題が「生贄」)」は冒頭から重くドラマティックな展開を見せ、最後にはロブ・ハルフォードがまさに生贄の断末魔のような絶叫シャウトを聞かせるし、続く「ザ・リッパー(邦題「切り裂きジャック」)」は邦題のとおり切り裂きジャックのテーマである。短いが、劇的な展開を凝縮した超名曲だ。
名バラード「ドリーマー・ディシーヴァー」、そしてこれぞ大英帝国の誇りよ・・と英国人でもないのにこぶしを振り上げたくなる主題歌的な超名曲「タイラント(邦題 「独裁者」)」など、書いていたらキリがないほど密度の濃い内容なのである。
誇り高きツインリードのギターソロが荒れ狂う「タイラント」は後に続く「ジェノサイド(邦題「虐殺」)」とセットになっており、こちらはオノを振り下ろすような重く鋭利なギターリフがザクザクとリズムを刻みながらどっしりとミドルテンポで進んでゆく。ライヴではセットで演奏されることが多かった。
ただ、80年代以降の「ヘヴィ・メタル」の様式を確立してからの作品を先に聞いていると、サウンドが軽く聞こえてしまうかもしれない。軽いというのは質感の違いなので、ある程度聞き慣れれば良さが分かるようになるだろう。
もっと聞き込めば、より深みのある音を感じることができるだろう。黎明期のヘヴィ・メタルの原点にして、ハードロックやヘヴィ・メタルという音楽の描写力、深みをまざまざと感じさせてくれる名盤だ。