1976年 ドイツ
レヴューの際、いつもamazon.comから画像をお借りしているが、このアルバムのジャケットは登録されていなかった。本当に残念だ。
あの発禁ジャケットと並べてでないとあまりレヴューを書いた気になれないのだが・・・
ぜひ検索してご自分の目で確かめて頂きたい。このアルバムのジャケットときたら・・・
「局部にあたる部分のガラスに亀裂が入った
12歳くらいの幼女のポルノ写真」
というぶっとんだものだ。まさに「Virgin Killer」というところか・・
よくもこんなジャケットがまかり通ったものだと思うが、日本以外の国では発禁になったそうな。(日本では発禁にならずそのまま流通した。)
悪趣味である。しかし、アルバムジャケットとして考えると実に内容を良く現しており、秀逸なジャケットだと言える。まるで、美しく、しかしおぞましいが故に見てはならない芸術作品を見るかのような・・
本作はドイツのハードロックバンド、スコーピオンズの4作目の作品である。初期の屋台骨を支えた天才ギタリスト、ウルリッヒ・ロート(後にはウリ・ジョン・ロートの名前で活動)在籍時の作品は全て名盤とも言われている。
初期スコーピオンズの魅力・「売り」はウルリッヒの奏でる、クラシック音楽的な味を備えたいわゆる「泣き」のギタープレイと、まるで日本の民謡や演歌に通じるような、感情のうねりのような旋律を配した楽曲であった。そしてもうひとつはハードロック界で最も艶やかな声と抜群の声量を備えたシンガー、クラウス・マイネの歌唱である。
上記の特徴はスコーピオンズの初期作品全てに通低している。それらは「暗く、艶やかで美しい」いかにもドイツ民謡がそのままロックになったような音楽であった。もちろんどれも「ハードロック」ではあるのだが・・・この作品だけはその「ハード」具合が極端に高い。音のハードさだけではなく、曲によって描写される世界そのものがさらに暗く、狂気を漂わせている。なにやら「レッドゾーンを振り切った」ような感じを受ける。
冒頭を飾る「Pictured Life」は美しく激しいギターメロディから始まる。どこかファンキーな風味もする曲だが(ウルリッヒはジミ・ヘンドリックスを崇拝していることで知られており、ウルリッヒの書く曲の中には彼持ち前の泣きのメロディと、ジミヘン的なファンキーな節回しが絶妙に融合しているものがいくつかある)終始「嘆き続けて」いるかのような印象を聞くものに与える。まるで慟哭のようにも聞こえるのだが・・
クラウスの艶やかな声もこのアルバムでは「暴虐的」と表現したくなるような変貌を遂げている。ダーティかつ荒々しい歌唱が多いのだが、元々の艶やかな声がザラつきを帯びて吼えまくる様は背筋がゾクッとするほど鮮烈だ。
タイトルトラック「Virgin Killer」における歌唱などは「邪悪」な感じすら受ける。この曲を聴きながらアルバムジャケットを眺めていると、このいたいけな少女が悪魔に陵辱される様が目に浮かんでくるようだ・・・
「Catch your Train」はワイルドに疾走するハード・ドライヴィン・ロックで聞いていて気持ちの良い曲だが、やはり暗い。なぜか明るくはなりきれないのである。ファンキーにうねる「Hell Cat」はウルリッヒがヴォーカルを取り、やがてアルバムは暗く、陰鬱で寂漠としたバラード「Yellow Raven」で幕を閉じる。
ハードロックの作品でありながら、暗さ、陰鬱さ、暴力、危険などをこれほどまでに「描写」している作品は他にあまり例を見ない。高度な描写=表現をしているという意味で、非常に文学的なロックとも言えるのではないだろうか。
この作品はぜひともアルバムジャケットを見ながら「体験」すべきだと思う。