1984年 イギリス
砲弾荒れ狂う戦場、戦争の歴史を繰り返さざるを得ない人間の性、国と国、民族と民族のすれ違い、そんななか戦う男たちの怒りと悲哀・・
TANK「戦車」という名のとおり、彼らは戦場や戦いをモチーフにした曲が多い。というより、バンドが創造する音楽のメインコンセプトのひとつであるというべきか。
この作品は、デビュー当初からそのパンキッシュなハードロック/ヘヴィメタルで「NWOBHM」(ニューウェイヴ・オブ・ブリティッシュヘヴィメタル)の一員として注目を集め、そのひときわ男臭いサウンドが魅力だったTANKの4作目にして最高傑作。
パンクの衝動性や、勢いにまかせて爆走する初期のスタイルを基本的には継承しながらも、ややカッチリとしたサウンドになり、曲の構成を練り、より深みのある表現を目指したTANKが成しえたもの。それは本作のタイトルトラック「HORNOR AND BLOOD」に全て結実していると言っても過言ではないだろう。
一言でいう。「かっこいい」のである。
漠然としすぎているのは承知しているが、そうとしかが言いようがない。扇情的なメロディ、吼えるヴォーカル、土煙をあげ進軍する重戦車のようにドッシリと、適度なテンポで疾走する曲構成。
何と言えばいいのだろうか、まさに「戦う男の怒りと悲哀」を見事に表現しきった音楽なのである。
どうしようもなく巻き込まれる戦争、様々な矛盾を抱えながらも目の前には敵がいる。なぜ戦わなければならないのか?疑問と理不尽な戦争、それを強いた国家への怒り、個人レベルでは何の恨みもないはずの他人に対して武器を向けあい、殺し合わねばならない戦士たちの戸惑いと悲哀。そういったものを全て抱え込み、それでも戦わなければならない、男たちの激しい思い・・
これは人生にもなぞらえることができるだろう。
「HONOUR AND BLOOD」=名誉と血。戦い散ってゆくものたちへの激しすぎる挽歌。バンドを率いるアルジー・ワードはがなり声で絶叫する「For their Honour and Blood(奴らの名誉と流した血のために)!」と。
激しいサウンドは見事に戦場の爆音、舞い散る砲弾、血を流しぶつかり合う兵士たちの姿を描写する。ギターソロはまるで兵士たちの声にならない叫びのように激しく響く。
この作品は、単にメロディやリフがどうのこうのといった次元を越え、聞き手の胸に様々な感情や、何らかのイメージを想起させるものを持っている。もちろんタイトルトラック以外にも、続いていく戦争の愚かしさを歌った、構成が見事な長尺ナンバー「The War Drags Ever On」など、全編を通して素晴らしく表現力に優れた「男のヘヴィ・メタル」である。
全ての戦う男たちへ。