2004年 日本
バンプ・オブ・チキン(以下バンプ)は、デビュー当初に比べれば確かに洗練されてきた。古くからのファンはそれを嫌がるが、悲しいかな時間は過ぎてゆき、だれもが年をとり成熟してゆくものだ。
「K」や「グングニル」「グロリアス・レボリューション」といった名曲疾走ナンバーを有する「LIVING DEAD」の頃に比べれば、この作品は腰を落ち着けて聴く内容になっていると思う。もちろん、大枠では変わっていないのだが、比較をすればそういうことになる。
個人的な感情で言うと、大学生の頃に聞いた「LIVING DEAD」では「グングニル」の歌詞にハッとして胸をえぐられるような熱い思いを呼び覚まされたものだった。それは恐れを知らない若さ(逆に言えば青さ)の叫びだった。
もちろん今でも、「グングニル」を聴くと相変わらず胸が熱くなる。だが、時が流れて社会人となった自分にとっては、この「ユグドラシル」の「ギルド」を聴いて、その歌詞とどこか悲しげな、しかし優しげなメロディに自分の状況を重ね合わせることのほうがよりリアルなのだ。
利己的な人間の醜さをハードでダークなロックに仕上げた「乗車権」、「fire sign」など、おそらくバンドメンバーも年を重ねたがゆえであろう深みのある歌詞を書いている。
その最たるものが「ロストマン」だ。
「ロストマン」というのは何を意味するのだろう。
生きていき成長していく中で切り捨てていった自分自身、失われた自分のことなのだろうか。
失いたくない純粋な思いや、抱いていた夢などを少しずつすり減らしながら、自分は少しずつ変化してゆく。
本当にこれでよかったのだろうか?と時々不安になる。そして、捨てていった自分の一部たちが「ロストマン」
「これでよかったのか?」自問自答しながらも、自分にできる精一杯の選択をしながら、人は生きてゆく。
その選択の積み重ねこそが人生なのだ。進んできた道に間違いがあったとしても、その間違いすらもまた人生なのだ。そして僕らは進んでいく。「ロストマン」に別れを告げ、そしていつかまた、残していった自分と再会できることを祈りながら・・
だれもがこの歌詞を自分に重ね合わせるだろう。僕もまたそうだった。人間ってそんなもんだ。それが人間ってやつなんだ。だから、精一杯やるがいいさ・・とぶっきらぼうに、しかし優しく諭されているような気分になった。
そして「ロストマン」と双璧をなす(シングル曲でもあるが)もうひとつの名曲が「sailing day」だ。
「グングニル」「ハルジオン」タイプの疾走ナンバーなのだが、歌詞は夢に向かって生きる人への応援歌、といったところか。歌詞は青臭いと言えば青臭い。
だが、「グングニル」の頃と少し違い、現実を目の当たりにしたうえでも、なお青臭い熱い心や冒険心を忘れようとしない、勢いだけではない「意志」を感じさせる。それでも、おれたちは信じてるんだ・・みたいな・・バンプ史上最もカッコよく、心を高ぶらせる曲だと個人的には思う。